That's Entertainment
フルトモ記念日
バブルが弾ける前にArt Dealerを始めた頃のことです。
NYを拠点に活躍する日本人のArt Dealerと知り合いました。
日本に、「今が買い時」という言葉を流行らせた人物です。
互いに競争相手なので、本音で語り合うことはありませんでした。
美味しい獲物は逃さない。不味くなれば逃げる。
チャーミングなクールさが業界では一際目立っていました。
物腰が柔らかいので人々に信頼され社交上手な人でした。
酒宴で共通のクライアント(紙袋の男)が酔った勢いで、
「お前は!岡山のユダヤ人だ!」と罵られても、顔色一つ変えず、
ポーカーフェイスを通し、商いに繋げるために努力をしていたと推測します。
彼の絵のコレクションは良質のものばかりで学ぶところが沢山ありました。
その内に会う機会がなくなり、彼の消息がNYから忽然と消えました。
当方も長年のNY生活にピリオッドを打って帰国し、今日に至っています。
8年前、夫の代理で香港BASELアートフェアに出かけた際、入場者で混雑する
会場で20年ぶりに彼と再会しました。彼の笑顔は相変わらずチャーミング。
翌年の香港でも再会し、その時は再婚した奥さんを同伴していました。
NYを去った後、シンガポールに移住し現代アートのギャラリーをオープン。
日本の画廊達が挙ってシンガポールに支店を開く先駆けになりました。
東京AFの国際フォーラムで弊廊のブースを訪ねてくれた際、
岡山の親が亡くなり、いよいよ岡山が遠くなったと仰ったのが印象的。
その彼から先日メールが届きました。
岡山の某プロジェクトに取り扱い作家の作品を展示することになり、
コロナ次第ですが、作家・猪子寿之氏と一度は岡山に行きますとのことでした。
亡夫と同い年の彼が昔と同じように彼らしく動いている。
エールを送りたいです。